dry eyes ドライアイ Dry eyes

ドライアイとは

ドライアイとは涙の分泌量や質の低下により、眼の表面を均一に潤せなくなる病気です。幅広い年齢層で発症し「目がゴロゴロする」「目がかすむ」「目が疲れやすい」などの症状があらわれます。
ドライアイの原因は加齢や不規則な生活、コンタクトレンズの使用、目の手術の影響などさまざまです。ドライアイは重症化すると失明に至る病気に発展することもあるため、眼に異常を感じたら早めに眼科に受診しましょう。
ドライアイの種類
ドライアイの種類は涙の量が減る「量的な異常」と、涙の性質や涙を保持する能力が変化する「質的な異常」の2つです。
涙は、眼を乾燥や異物の侵入から守る役割を果たします。涙は「ムチン層」「涙液層」「油層」の3つの層で構成されており、それぞれの層のバランスを維持することで涙の質が保たれます。しかし、3つの層のどれかに異常が起こると層のバランスが崩れ、質的な異常がおこります。
涙の層の異常でもっともドライアイの原因として多いのが、油層の異常です。油層は涙の1番外側にある層で、涙の蒸発を防ぐ役割をしています。この油の層は、まばたきをするたびにまぶたの裏側にある「マイボーム腺」という器官から分泌されています。しかし、汚れやメイクによるマイボーム腺の詰まりや加齢に伴い、分泌機能が低下すると油層が維持できません。これをマイボーム腺機能不全(Medibomian Gland Dysfunction:MGD)といい、ドライアイ症状を訴える方の80%以上を占めているといわれています。
セルフドライアイチェック
ドライアイ検査
ドライアイの検査では、自覚症状の確認のほかに涙の量や質、眼の表面の傷の有無を調べます。
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涙液量の計測(シルマー試験)
専用のろ紙をまぶたの縁に挟み、5分間でどのくらいの長さが濡れるかを調べる検査です。
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涙液層破壊時間の計測(BUT検査)
10秒間まばたきをせず目を開けたままにして、目を開いてから、涙の層が乱れるまでの時間(涙液層破壊時間)を計測します。
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細隙灯顕微鏡検査
フルオレセインという色素を点眼してから細隙灯顕微鏡を使うと、涙の質を調べるBUT検査と角膜や結膜の状態を調べる生体染色検査ができます。涙の質を調べるBUT検査は、10秒間まばたきをせず目を開けたままにして、目を開いてから涙の層が乱れるまでの時間(涙液層破壊時間)を計測します。生体染色検査は、傷ついた部分が色素で染色されるため、角膜や結膜にできた傷の状態を直接見て診断が可能です。
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当院独自の検査
当院ではドライアイの原因やタイプを詳しく検査・分類できる最新のドライアイ検査装置「idra(アイドラ)」を導入しています。この装置は涙液量や涙液層破壊時間、涙液の質を自動計測できるだけでなく、マイボーム腺の観察も可能です。
ほかにも、MR-6000という装置を用いて涙の安定性の評価、涙液貯留量やマイボーム腺の観察など総合的にドライアイの検査をします。
治療方法
ドライアイの改善には、ドライアイのタイプや症状に適した治療を行います。

点眼治療
ドライアイの症状が軽いケースでは、眼に潤いを与える点眼薬を使用して症状を緩和します。点眼薬はタイプや症状に応じて人工涙液、ヒアルロン酸製剤、ステロイド点眼を使用します。
ほかにも涙の各成分に直接はたらきかける点眼薬も開発されました。これは正常に機能していない涙の層をターゲットにするため、より効果的な治療が可能といわれています。

涙点プラグ
涙は涙腺で作られ、目頭にある2つの涙点から排出されます。涙点プラグはその涙点に蓋をすることで眼の表面に涙をためる治療法です。

マイボーム腺機能不全(MGD)治療
ドライアイの中でもマイボーム腺機能不全(MGD)が主な原因と考えられる方には、病院での治療に加えて自宅でのケアをご提案しています。当院では最新のMGD治療であるIPL治療も取り入れています。

ドライアイの新しい治療 IPL治療
IPL(Intense Pulsed Light)治療は集中制御パルス光療法と訳され、MGDの新しい治療法です。光照射の刺激によりマイボーム腺周辺の血流改善や油脂を融解させ、涙液の流れを整えます。治療による痛みはなく、眼球に害を与えることもないとされています。光照射による治療のため肌への負担が少なくダウンタイム(安静時間)が不要という点もこの治療のよいところでしょう。 IPL治療はドライアイ治療に対しては保険適応ではありませんが、国内外の学会で大きな注目を集めている治療です。治療後の症状改善には個人差がありますが、ドライアイの症状改善を示す臨床データが報告されています。
病院で行う治療
病院で行う治療には、マイバム圧出処置と点眼、眼軟膏の処方があります。
マイバム圧出処置とは、痛み止めの点眼麻酔をしてからマイボーム腺に詰まっている古い脂を圧出する処置です。マイボーム腺から分泌される油分は涙の質の向上に大事な成分です。月に1回程度、定期的に処置をして、スムーズな油分の分泌を促します。
点眼と眼軟膏は眼の表面に油の膜を作り、涙の蒸発を防ぐ効果があります。細菌や炎症性の眼瞼炎がドライアイに関連するケースもあり、症状によっては抗生剤やステロイド点眼を処方することもあります。
自宅ケア
当院で提案している自宅ケアは「温罨法」「眼瞼清拭(がんけんせいしき)」「食事療法」の3つです。
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温罨法
温罨法は、まぶたを温めることによりマイボーム腺の脂を溶かし、まぶたの血流も改善します。温めたタオルや温熱アイマスクを使用して1日2回、5分程度、眼の周りを温めましょう。まぶたとマイボーム腺周囲の温度を一定時間、高く保つのが大切です。
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眼瞼清拭
眼瞼清拭はマイボーム腺の古い脂や汚れなどのつまりを取り除き、脂の排出を促す効果があります。また、マイボーム腺周囲の細菌量を減らし、感染を予防するのも目的の1つです。なお、当院では目にしみにくい「アイシャンプー」を取り扱っています(自費診療)。
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食事療法
マイボーム腺から分泌される油分は、体の脂肪成分を反映する可能性が高いと考えられています。マイボーム腺から分泌される脂の成分を正常化するためには、食事にも配慮が必要です。血液をサラサラにする効果のある「オメガ3脂肪酸」を意識したバランスのよい食事を心がけましょう。